ベネツィアの美しさの根源は車のない事である。全てが歩く人に合わせて計画されている。一瞬で過ぎ去っていく訳ではないので際だってけばけばしくなくて良い。大量のものが行き交う訳ではないのでスケールは小さくて良い。スピードがないので空間に変化があっても良い。そして、あの騒音も排気ガスもない。車社会へのアンチテーゼが示されている。
シカゴの何キロにもわたる広い直線道路の不安感を思い出す。
また、車を置く必要がないので一般の敷地は間口が狭く奥行きが極端に長く、一方が道路、他方が運河に面していて、多くの人間が限られた大地に共住できる。中央部分に風通しの為の中庭を設ける方法も、京都に見られる町屋と同じ発想である。ただ、それは運河という代替手段があったればこそ実現できた世界であり、一度車社会に組み込まれた他の都市ではもはや戻る事のできない理想郷である。
■画像は35年以上も前のもので現状とは大きく異なっている場合もあります。