アンドレア・パラディオ(Andrea Palladio 1508 Padova-1580 Vicenza)は全世界に最も影響を与えた建築家である。今なお世界中の至る所に見られるペディメント(3角破風)円柱(列柱)で支えるモチーフはギリシア、
ローマ神殿やルネサンス教会にも見られるが、あくまでモニュメントであり、その手法を建築のスケールまで落として応用したのは彼が最初であろう。
その後18-19世紀、イニゴー・ジョーンズ、クリストファー・レンをはじめととして、英米仏露などの建築家が公共建築のみならず住宅建築まで彼の手法を踏襲した。
一介の石工であった彼を庇護し教育したヴィチェンツァのユマニストのトリッシーノ伯の影響で古典主義を学び、
ローマにも足を運び実際に遺跡を調査し、その技法をヴェネツイアを中心とした
ヴェネト地方の各地で実践するとともに、『四書』を表し古典遺産を紹介した。
彼と彼の同時代の人々(
ジュリオ・ロマーノ、
スカモッツィ他)は、
マニエリストという名で呼ばれる。
ルネッサンス(古典主義)が
ミケランジェロによって完成の域に到達した後、その技法(マニエラ)を自己掌中にし、作品の中に自由自在に駆使した。
マニエリズムは、次の古典主義バロックに続く谷間の一時期として位置づけられているが、いつの時代にも現れる潮流である。
夏には、ヴィチェンツァから彼の作品を巡るツアーも企画されており、酸味の強い
ヴェネトワインの
産地に散在するヴィッラを是非見て下さい。
本のオススメ
『完璧な家』 パラーディオのヴィラをめぐる旅
ヴィトルト・リプチンスキ著 渡辺真弓訳 白水社4200円(税別)
05年6月に発行されたばかりの『パラーディオ』の本です。今までの解説本と違いどちらかというと旅行記に近い書き方であるが、十分な資料と考証にもとづいたパラーディオの伝記やパラーディオ主義の伝播の歴史が語られるとともに、著者リプチンスキ(ペンシルヴァニア大学教授・評論家)の建築家としての視点から住宅とは何かという問題に迫っている。訳者、渡辺氏(東京造形大学教授・建築史家)の女性ならではの明快な文体に引き込まれ、一気に読み終えてしまった。
* * *
舗装されていない、まさに踏みならし道のような小径が、モンテ・ベリコと呼ぶ丘の裾野を縁取っている。この丘はヴィチェンツァの南に広がるベリチ丘陵地帯の一部で、その北端に位置している。丘の斜面にはほとんど建物もなく、田舎に来たような感覚にとらわれるが、私のめざす目的地はパラーディオの記述によれぱ「町から四分の一マイルたらず」[第二書第3章20]のところにあり、私の
ホテルからも歩いてたいした距離ではない。
小径の角を曲ったとたん、ドーム屋根の建物のシルエットが朝もやの中に姿を現わした。ヴィラは高い地盤の上に建っているが、葉を落とした木々の枝に半ば隠されて建築的な細部までは定かでない。
小径が舗装道路につながるところに来ると、建物は高い石塀にさえぎられて視界から消えてしまった。急勾配の道を下るとやがて大きく立派な門が見え、……
第9章『最後のヴィラ』の冒頭部分(渡辺真弓訳)
■画像は35年以上も前のもので現状とは大きく異なっている場合もあります。