ファテプールシクリは
アグラの南西39kmにあるアクバル帝の城跡である。ここに住む聖者の予言によって男児を得たアクバルは、1571年に首都をこの地に移転させた。しばらく後、グジャラート地方を制覇したことを記念して、新たな都はファテープル・スィークリー「勝利の都」と名づけられた。
しかし、わずか14年後には水不足が原因で再び
アグラに遷都する。
およそ5年の歳月をかけて建設された都は、3km×1.5kmの広大な土地が城壁で囲まれ、その中央に宮廷やモスクを赤砂岩で築いた壮麗なものである。イスラム教徒でありながらアーチやドームを多用せず、傾斜した屋根や庇などに木造建築の木組みをそのまま石で表現し、インド古来の建築様式や技法が反映されている。この都はまさに、アクバル帝が進めた諸宗教融和政策の実践の場でもあったのかもしれない。
どの建物が好きかと好みを聞かれるとこの城を挙げる。どこか、日本の建築を思い起こさせるような解放感と、空間の展開を発見して心が落ち着く。そういえば、
ラナクプルのジャイナ教寺院でも似たような印象を持った記憶がある。(引用許可:ダイヤモンド・ビッグ社「地球の歩き方」編集室)