
●殉教者として有名なサン・セバスティアーノは3世紀末のディオクレティアヌス帝の時代に迫害される仲間を助けた近衛兵で、その若々しい肉体に何本も矢を受けた姿はエルグレコをはじめとして多くの画家達に描かれている。その痛ましさは処女殉教者達に通ずる妖しげなエ
ロティシズムを感じてしまう。そんな中でベルガモのアカデミア美術館にあるラファエロのそれは着衣していて、澄ました顔で矢を持って描かれている。このあたりがラファエロを好きになれない理由の一つかもしれない。
(絵葉書美術館-16聖セバスティアーノより)
●絵画の分野でのバロックの巨匠を挙げろと言えば、やはりカラヴァッジオをあげるだろう。最近、日本でも数々の展覧会が催され、ファンも沢山いるようであるが今一好きになれない。爛れた内臓に色付きのスポットライト当てて写実に徹して描くような技法は、トスカーナの
風土で美術に慣れてしまった工事屋の目にはどこか退廃的で、背徳的に映る。
私の友人の女性などは「そこがたまらない。」とのたまうが、欲求不満ではないかと心配してしまう。

彼の実生活も放蕩と流浪にあけくれる。1571年ミラノに生まれ、ローマに出て名声を得始めた矢先、同じ画家仲間といざこざを起こしマルケ地方に逃
げ出し、ほとぼりがさめてローマに帰るも、今度は障害事件を引き起こしジェノヴァに逃亡。再び、ローマに帰るが、直ぐに喧嘩で人一人を殺傷し、マルタに逃げ出す。マルタでも騒動を起こし、シラクーサ、メッシーナ(シチリア島)を経てナポリに戻り、ローマへ向かって旅立つが、その途
上に病死する。その流浪の間も絵筆を離すことなく、彼の最高傑作『聖ジョヴァンニの斬首』もマルタ島で描かれた。恐るべき人生である。
(絵葉書美術館-18天使と天子より)

●もう一人艶福家のゼウスの子供たちの中で有名なのはヘラクレスであるが、ちょっと頭の弱い筋肉マンというイメージが強い。彼はゼウスとアルクメネ(ペルセウスの孫・勇者アムピトリオンの婚約者)の不義の子であり、生まれる時からゼウスの嫉妬深い妻
ヘラの憎悪を一身に受けることになる。
結婚した後、ヘラに狂気を吹き込まれ我が子を殺し、妻を自殺に追いやった彼はその贖罪のために「ヘラクレスの選択」と言われる12の冒険に出かける。この最初の冒険で倒したネメアの獅子の頭と皮を兜・鎧のように身につけて戦う姿が彼のトレードマークとなる。冒険が
終わってからもギガンテス(巨人族)との戦いやアンタイオスと相撲など休む暇も無く戦いに明け暮れ、最後は再婚した妻の嫉妬でヒュドラの猛毒によってあっけない最期をとげる。尚、工事屋の大好きなエルキュール・ポアロのエルキュールはヘラクレスの仏語読みで、アガサ
がどんな意図を隠していたのか考えるのも一興かも。
(絵葉書美術館-23ギリシア、ローマ神話より)