プブリコ宮殿にあるアンブロジオ・ロレンツェッツィの『良い政府、悪い政府』の壁画は、当時の
シエナの共和制に対する市民の誇りが良く表れている。絵は啓蒙の道具にもなった。
ペーター・
ルーベンスはフランドル地方の出身で、1600-08年にイタリア各地で腕を磨き、スペイン、フランスを経て再び
ベルギーに帰って活躍した国際派の画家である。
200点を越える
肖像画作家としても有名であるが、メディチ家出身のフランス王妃マリアの依頼で、夫アンリW世の業績を讃える数々の大作を残している。

以前にも書いたはずだが、
ボッチチェルリの『カルーニア(讒言)』という小さな絵が
ウフィッツィ美術館にある。まだルキアノスもアペレも知らなかった工事屋が何度も繰り返し見ていたら、横から来た僧侶が、人差し指と中指を軽くまげて、絵の上をトントントンとたたいて(30年前の
ウフィッツィは開放的で誰でも全ての作品に近づく事が出来し、彫刻に触れても監視人は文句も言わなかった。?)、こちらを見て微笑んで過ぎ去っていった。

それ以来ずっと気になっていた作品で、工事屋のお気に入りの一つである。
この絵は2世紀のシリアの風刺作家ルキアノスの文章を下に、
フィレンツェの画壇から遠ざけられていた晩年の
ボッチチェルリが描いた作品で『アペレの讒言』と呼ばれている。
アペレ(希名:アペレス)は前4世紀のプトレマイオス王の宮廷画家で、「アペレスが仲間のアンティピロスの嫉妬心から反逆者への内報者と讒言され王の前に引き出された経験を、後に無実が証明された後で自分への戒めの為に描いた。」という逸話を元に、
ボッチチェルリが描がいた。
また、男色の疑いで告発されたことのある(結婚歴もない)
ボッチチェルリが、美しい女性像で寓意の登場人物を固めたのは当然だとしても、アペレに不遇な自分の身を重ねあわせたような悲壮感を感じてしまう。
登場人物は左から順に、アレーティア・真実、メタノイア・後悔、アパテー・欺瞞、アペレ、ディアボレー・中傷、エピプーレー・裏切り、プトノス・嫉妬、ヒュポレーシプス・疑念、プトレマイオス王、アグノイア・無知の錚錚たる面々だが、現代に於いても無縁の出来ごとでは無く、真実の指差す方向が気にかかる。とにかく知れば知るほど気になる作品である。
アペレの詳しい解説は近藤司朗氏の
古典ギリシア語事始・ルキアノス『中傷をやすやすと信じないこと』のページを見て下さい。