ルネサンスが終わると絵画の中心は
ローマやスペイン、それにフランドル地方に移っていった。また絵画も
肖像画が中心となって、宮廷画家たちが活躍した。巨匠
ルーベンスに「最も優れたわが弟子」と言わしめたヴァン・
ダイク(1599-1641)は14歳にてアントワ
ープでデビューし、22歳の時
ジェノヴァにやって来てイタリア各地の宮廷で多くの
肖像画を残した若き天才画家である。筆使いの名手と言われたように、踊るような筆跡が画面に躍動感を与えルネサンスの終焉を告げている。

彼が晩年(1641没)を過ごしたロンドンで描いた『チャールズ1世とヘンリエッタ』が
フィレンツェの
ピッチ宮殿にある。いかなる経緯でこの地に所蔵されているのかしらないが、清教徒革命(1642〜)で処刑されたイギリスの王とその后の
肖像画に接するとは思いもよらなかった。
ヴァン・
ダイクによって克明に描かれたギョロ目と厚い唇に象徴される神経質そうな顔立ちは、間近に迫った不幸を予感させるかのようである。事実、彼はかん高く王の権威を唱えるだけで、カトリックや清教徒と対立し、内乱を起こし、結局はクロムウェルの軍(鉄騎隊)に捕らえられ、斬首された。
高校時代の教科書ではまるで別次元の出来事として語られていたルネサンスと清教徒革命がこんなに近い関係であったなんて、思ってもみなかった。考えてみると、教科書の執筆者は政治史や経済史の研究者で美術には門外漢であることが多く当然のことなのかもしれないが、知識としてではなく趣味の一部として歴史を見ることが出来るようになったのは楽しいことである。