
やっと、ヴィーナスの登場です。
ボッチチェルリの『ヴィーナスの誕生』はあまりにも有名で、恐れ多くて今更工事屋如きが論じる作品ではありません。ローマ神話ではもともと春と草木の下級の女神様だったそうですが、泡(aphros)から生まれた愛と美と豊饒のギリ
シア神のアフロディテと同一神とみなされるようになってからメジャーな女神として扱われるようになったそうです。
また、シーザーやアウグストゥスのユリウス家がこの女神の末裔と称していたことは有名であり、神と人間が非常に近い存在であったことの証である。(左;
ローマのヴィーナス 右:アフロディテ(
ポンペイ))
イタリアでも、『バッコ、タバッコ、ヴェネレ』は男の甲斐性と言われていますが、最初にこの慣用句を聞いた時バッコがバッカス、ヴェネレがヴィーナス、まではすぐ分かったのですが、「タバッコなんて神様いたっけ?」と真面目に考えてしまいました。日本の『
呑む、打つ、買う』と非常に良く似て、調子良い言葉ですが、
こんな、ところにまで神様がお出ましになられる世界です。えっ、『泡の女神はもっと近しい』って……。困ったもんだ。

上述のヴィーナスがヒロインだとすれば、ヒーローはバッカス(ギリシア名ディオニュソス)であろう。まあ、知らない人がないくらい酒の神として有名で、全能の神ゼウスと人間セメレーの子である。妻は
クレタのミノス王の娘、英雄テーセウスの恋人であったアリアドネー
で、仲の良い夫婦として描かれている(
ポンペイ秘儀荘)。
彼はまた、詩歌や演劇の保護者としても知られ、大衆にはとても人気があり、いろんな形で作品に登場する。有名なのは
ミケランジェロやカラバッジョの若くて凛々しい姿であるが、
ルーベンスやバルビーナの醜い姿にわが身を重ねあわせ、笑い飛ばせなくなった自分がうらめし
い。(左上から
ミケランジェロ、
カラヴァッジオ、
ルーベンス、バルビーナのバッカス)

もう一人艶福家のゼウスの子供たちの中で有名なのはヘラクレスであるが、ちょっと頭の弱い筋肉マンというイメージが強い。彼はゼウスとアルクメネ(ペルセウスの孫・勇者アムピトリオンの婚約者)の不義の子であり、生まれる時からゼウスの嫉妬深い妻
ヘラの憎悪を一身に受けることになる。
結婚した後、ヘラに狂気を吹き込まれ我が子を殺し、妻を自殺に追いやった彼はその贖罪のために「ヘラクレスの選択」と言われる12の冒険に出かける。この最初の冒険で倒したネメアの獅子の頭と皮を兜・鎧のように身につけて戦う姿が彼のトレードマークとなる。冒険が
終わってからもギガンテス(巨人族)との戦いやアンタイオスと相撲など休む暇も無く戦いに明け暮れ、最後は再婚した妻の嫉妬でヒュドラの猛毒によってあっけない最期をとげる。尚、工事屋の大好きなエルキュール・ポアロのエルキュールはヘラクレスの仏語読みで、アガサ
がどんな意図を隠していたのか考えるのも一興かも。