
ジュディッタは民族(イスラエル)の尊厳を守るために敵将ホロフェルネスの寝首を掻く美しい寡婦である。
ウフィッツィの
ボッチチェルリの小品(何枚も買ったはずが全て使い切ってしまっていた)

が有名であるが、美女が髭もじゃの切り取られた頭部を掲げるという猟奇性にひきつけられるのか、
アローリを初めとしてバロック期の多くの作家が題材に取り上げている。
実をいうと、私が聖書を読み始めたのはこの作品を見てからである。絵の前にある『ジュディッタ』という説明だけでは、この美しい女性は悪女なのか、それとも仇討ちなのかまるで見当がつかなかった。解説書にも題材についての説明はまるでない。そこで、日本から聖書を送ってもらった。
全く、不純な動機である。新しく相互リンクを張って頂いた30番地教会の牧師さん、あきれないで下さい。
ダヴィデというとアカデミアの
ミケランジェロの作品に代表されるように、勇猛果敢な若い戦闘的な立派な王を連想するが、聖書に出てくる話は結構世俗的である。
彼は、戦地に行っている家来の妻の湯浴みする姿を見て心引かれ、呼び出して子供をつくり、その亭主を結局は激戦地に送り出し戦死さしてしまう非道な王でもある。聖書はその罪を一生をかけてつぐなう王を描き(サムエル記)、神に対する不動の信仰の重要性を説いていて、なかなか大した物語性をもたしている。そしてその生まれた子が賢王ソロモンである。
それらを頭に入れてから作品を眺めてみるとまた違った印象を受ける。歴史ではイスラエル王国の繁栄を築いた偉大な父子としてしか習っていなかったと思うけれど……。
アカデミア美術館の
ミケランジェロ作品の他に、
フィレンツェには
バルジェッロ宮殿に
ドナテッロとベロッキオの3つのダヴィデ像があります。じっくり、見比べると楽しいと思いますよ。

ジュディッタと同じように男性の首を切った女性で有名なのが、新約の福音書に登場するサロメである。
聖ジョヴァンニ(聖ヨハネ)のページにも書いたが、義理の父親(ヘロデ王)と母親(ヘロデヤ・兄嫁)の再婚に反対したサン・ジョバンニの首を踊りの褒美に要求した女性(名前は載っていない)である。
19世紀末、童話『幸福な王子』の作者オスカー・ワイルドの『サロメ』で、
預言者ヨカナーンの首を愛撫するビアズレーの退廃的な挿絵で世紀末の一世を風靡し、その後、戯曲や歌劇にとりあげられサロメという名前が定着してしまった。
そもそも、サン・ジョバンニの首を所望したのは非難されたヘロデアからの入れ知恵だったのが、ワイルドによってサン・ジョバンニへの想いを袖にされた腹いせに代わり、果ては義父のサロメへの横恋慕の結果などという様々の脚色が行われ、サロメはすっかり妖婦になってしまった。罪作りな話である。