
聖書に登場する女性の中で、
聖母マリアの次に多いマダレーナ(マグダラのマリア・持物は壺)はいくつもの顔をもっている。後世の聖職者達の解釈で他の女性と同一視された結果である。その結果、娼婦のような姿で描かれたり、豪華な衣装を身に着けた世俗の代言者のように表される。どうも、禁欲生活を強いられた僧職者達の恨みがこもっているような気がしてならない。
マダレーナはキリストに最も近い女性である。十字架の道行き、礫刑、降架、哀悼、埋葬、
復活と彼の最後の場面に登場する彼女の姿は残された最愛の女性としての姿を連想してしまう。最後は
マルセイユに渡り、荒野の中で30年も苦行を続けたという。
ドナテッロや
セッティニャーノの襤褸布をまとい、髪がもつれ合った姿になってもキリストへの想いを断ち切ろうとした貞節な女性だったと思う。
アッシジの
サンタ・キアラはサン・フランチェスコに帰依した女性で、サンタ・ルチアは
シラクサ、サンタ・カテリナはエジプト、サンタ・テレーザはスペインの聖処女である。聖者に列せられるのは処女でなくてはいけないのかと勘繰るのはひねくれもの筆者だけであろうか。

サンタ・テレーザは16世紀後半、スペインの「女子跣足カルメル会」の創設者でたった3人しかいない女性教会博士の一人である。どちらかというと神秘的な雰囲気が強く、彼女の著作「聖人教書」に基づいて作られた
ローマのサンタ・マリア・デッラ・
ヴィットリア教会にある
ベルニーニの最高傑作『恍惚のサンタ・テレーザ』の彫刻は聖なる愛の神が矢をもって彼女の
胸を貫く場面をあらわしている。金色に輝く光の背景が法悦の瞬間の表情を際立たせている。観光コースから離れてしまっているが、
ローマ駅からさほど遠くない場所にあるのでバロック彫刻の真髄を鑑賞してもらえば幸いです。すぐ近くにバロック建築の最高傑作の
サン・カルロ・クァットロ・フォンターネ教会もあります。