いよいよ、マドンナの登場です。数ある宗教の中で創始者の母親がこれほど信仰の対象となった例は他にはないのではないか?私のキリスト教関係の絵葉書の中で半数以上がマリアを題材にしたものである。私の嗜好が偏っていたのかもしれないが、改めて驚かされる。
しばらく、聖母を題材にした報告書が続きます。

皮鞣し職人の息子であることから『
ボッチチェルリ』と呼ばれるようになった絵の上手なサンドロは、
フィリッポ・リッピや
ヴェロッキオの下で徒弟奉公をし、25才のころ独立画家として認められるようになる。そして、メディチ家の庇護を受け
『春』や『
ヴィーナス誕生』といった生気あふれる作品を手がけ、
当代随一の画家としてもてはやされる。しかし、この『聖母の戴冠』を描いた頃には、メディチ家の追放や
サヴォナローラの焚刑な

どといった政変に翻弄され、彼の画風も精神もだんだん変化していった。天使が舞いマリアが主の祝福を受ける上界と下界の聖人達を明確に分断した画面構成は、
それまで構図の素晴らしさで他の画家たちを圧倒してきた
ボッチチェルリには見られない構成である。どこか、暗示性に富み、これ以降の『
讒言』『降誕』(右画像)に見られる神秘主義的な表現方法である。そして、彼はだんだん孤立していき、不遇なうちに生涯を終えたという。