マンハッタン島の最南端は
ニューヨーク発生の地である。17世紀初めに8人のオランダ人が入植し1626年たった24ドルでインディアンから買取り、19世紀の初めまでニュー
アムステルダムと呼ばれていた。1789年フェデラル・ホールでワシントンが大統領
就任演説をして最初の首都となり、
1792年には
ニューヨーク証券取引所が開設され、ウォール街は世界金融の中心地として発展する。19世紀中ごろから建築ラッシュにみまわれ、新古典主義、ゴシックリヴァイバル、近代主義の建物が林立し摩天楼の礎が築かれた。
フェデラルホール記念展示館(タウン&デーヴィス作)はl834-42年、当時流行していたグリーク・リヴァイバルの傑作の一つで、力強いドーリア式の8本の列柱が3角形のペディメントを支え、税関としての威厳を象徴している。半世紀以上たってすぐ隣に建て変えられた証券取引所(J.B.ポスト作)も同じグリ
ーク・リヴァイバル様式であるがどこか窮屈そうで気の毒である。
ウールワース・ビル(カス・ギルバート作)は市庁舎の前に1913年に建てられ、当時世界最高の高さ(1930年
クライスラービルの完成まで)241mをもち、その美しいゴシック風な外観と
テラコッタ仕上の装飾によって「商業の大聖堂」と呼ばれた。ガラスばかりの超高層には感じられない
安らぎを感じるのは工事屋だけであろうか?
今は無きワールド・トレード・センターは1980年完成した日本人建築家ミノル・ヤマサキ氏の手によるものである。出来た当初はその単純な外観と圧倒的な量感(高さも含め)、荒涼とした足元廻りからとかく批判が多かったが、そのうち、
ニューヨークの景観には無くて
はならないものになっていた。それがあの9.11事件の後、突如消えてしまった。今はどんな光景だろうか?
友人にこの計画に携わった建築家がいるが、倒壊した後で『よくあれだけもったもんだよ。中心のコアと表面の小柱の面剛性だけで411mを支えるなんて、横力をほとんど考えていなかったのだから。あの事態は計算外だよ。』と述懐していたが、それにしても見事に倒壊し
てしまったものである。地震力の制約がある日本では考えられないことである。そして、改めてテロの卑劣さに憤りを感じている。